各国通貨の存在感。日本円は重要ですか?(2023/5/27)

ビジネス

世界には様々な通貨がありますが、重要度でいうと大事な通貨は3つです。

1番目は、世界通貨の王者、アメリカドルです。米ドル、USD と表記します。USD は United States Dollarの略です。

2番目は、日本円です。JPY と表記します。JPY は Japanese Yen です。

3番目は、EUの通貨であるユーロです。EURと表記することもあります。EURは、Europe(ヨーロッパ)の先頭3文字です。

第1の通貨 アメリカドル(USD)

米ドルは、世界中のほとんどの国で利用することができます。国際間の取引でも一番多く使われています。現在の経済は多極化が進んでおり、いろいろな国の通貨が使われていますが、米ドルの存在感は断トツの一番であり、この傾向は当面続いていくことでしょう。アメリカ経済は世界全体を引っ張っていく力強さを持っているため、非常に存在感のある通貨です。

世界中の国々は、他国と取引するために、または何かの非常事態が発生したときのために、常にある程度の額の米ドルを保有しています。小さい国の場合、戦争や政治の混乱、天変地異があった場合など、その国の通貨の価値が急落する場合もありますから、そのような場合の保険という意味で、通貨の中で一番力のある米ドルは常に手元に持っていたいのです。

第2の通貨 日本円(JPY)

日本円が2番目なのは意外ですか? 日本経済は長期にわたり低迷しており、人口も少なくなっていき、これからどんどん衰退していくのではないかと心配している人もいるかもしれません。そんな日本経済の通貨の存在感が2番目というのはおかしいと感じるかもしれません。

日本円ではなくて、ユーロの方が重要なのではないか、いや GDP 第2位の中国の通貨である人民元の方がこれからは重要になってくると思う人もいるかもしれません。

日本円はたしかに成長性という点で、あまり目立った通貨ではないのですが、その目立たなさが、実は重要なのです。世界経済の中心がアメリカであることは知られていますが、いくらアメリカが元気であっても、経済状況は時々刻々と変化しており、調子のいいときもあれば悪いときもあります。

アメリカ経済の調子が悪くなると、米ドルの影響力も小さくなります。(米ドルが下がります) そのときに、米ドルの代わりに存在感を増してくるのが日本円なのです。米ドルと日本円が上がったり下がったりしてシーソーのように動くことで、世界の為替全体を安定させているのです。現在(2023年)の日本円は円安傾向が続いており力強さはありませんが、世界の為替システムの中ではとても大切な存在です。世界経済がグラグラと揺れているときでも、比較的安定しているのが日本円ということになります。

アメリカ経済が不安定になったら、日本円に資金を移して守りに入る。アメリカが成長しているようなら、米ドルに資金を移して増やす。アメリカと日本、地球のオモテとウラに位置していますが、通貨で見ても、米ドルと日本円はオモテとウラの関係で支えあっているというわけです。

第3の通貨 ユーロ(EUR)

ユーロは、EUの中で使われている通貨です。イギリスは2022年にEUを離脱しましたが、実はその以前から通貨はユーロを使用しておらず、イギリス独自の通貨ポンドを使用していました。ポンドはGBP(Great Britain Pound)と表記します。

ユーロに話を戻します。ユーロは1999年に導入された通貨です。ユーロ導入の前は、ドイツはマルク、フランスはフランといったように、各国は独自の通貨を持っていました。ユーロはEU圏内の経済活動をスムーズにして、アメリカ経済に対抗できる存在感を示すことを目的としてつくられた通貨です。

ユーロ導入当初は、比較的経済力のある国が参加していたため、安定した優等生的な通貨でした。しかし、時代が進むにつれて、EUに参加する国が増えるとともに、経済が安定していない国もEUに加盟しユーロを使うようになってきました。

そのため、ユーロは現在、経済の強い国と弱い国が混在し、さらに多様な民族や国家の複雑さを包み込んだ通貨になってきています。ユーロ圏全体の規模は拡大してきており、世界全体でみた場合、市場規模が大きい、存在感のある重要な通貨です。ただEU参加国が多いため、EU全体を平均したような為替の動きを示しているといえるでしょう。

為替を見る目を養う

ここまで、世界経済をみるときに重要となる3つの通貨、米ドル、日本円、ユーロについてみてきました。とりあえず、世界全体をざっくりとみる場合はこの3つの通貨のバランスを見ればいいでしょう。さらに言えば、日本から世界経済を見た場合、米ドルとユーロはかなり似たような動きをしていますので、ユーロは見なくてもさほど問題はなく、米ドルと日本円だけ観察していれば、大体のところは把握できるということになります。

補足:GDP世界第2位の中国の人民元

では、つぎに中国の通貨、人民元についてみていきます。人民元は中国元とも呼ばれます。略称はCNY(Chinese Yuan)またはRMB(renminbi)です。

中国経済は現在世界第2位のGDPを持っていますが、為替通貨としての存在感はどの程度でしょうか。

一般的な国の通貨の為替レートは、互いの国同士の経済力や資金需要により、柔軟にリアルタイムに変動します。(急速な為替レートの変動を避けるための調整が行われることはあります。)しかし、中国経済の場合は、人民元の為替レートは中国政府によりコントロールされる傾向が強くあります。つまり、為替レートが、実際の経済状況をリアルに反映していないことが往々にしてあるわけです。

また、中国政府が発表する各種の統計資料の値の正確性が低いため、中国の経済状況を把握しにくいという問題点もあります。さらに、人民元と外貨を交換しようとした場合、中国政府の規制により自由に交換ができないといったリスクもあります。人民元を売って他国の通貨に換えようとすると様々な制約を受ける可能性があります。そのため、中国の人民元は、透明性が低く、国際的な取引を行うためにはリスクが高いため、取引通貨にはあまり好まれない傾向があります。

このようなことから、中国の経済規模はGDP世界第2位と非常に大きいのですが、中国の通貨である人民元の存在感は、国際的にみた場合、あまり高くないということができます。

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